8月11・12・13日

・8月11日。木曜日。暑い。ばたばたしながら昼時の新幹線に乗り込み、福島へ。福島に帰るのは地震が起こってから初めて。夕方からフォーラム福島にてImage.Fukushima(http://image-fukushima.com/)という映画上映+トーク企画。本日は『原発切抜帖』という映画の後に、『「フクシマ」論』の著者開沼博福島県前知事の佐藤栄佐久トークトーク終了間際に、悪意ではなくむしろ善意から、聴衆の一人が遮るように怒鳴る場面があったのだが、記憶が正しければ、あれは「一人一人が考えなければならない」という抽象的な結論に対する苛立ちだった。補足的に言えば、「あなたたちが言っているような主体としての市民/国民など、存在するのか?」ということであった。
たとえ話をする。
クラスに問題児がいたとして、先生が「みんな、一人一人が考えるときだな」と言ったら(ジャージ着用の体育教師を想像してほしい)、どうだろうか? おそらく、生徒たちはうまく考えることはできない。さらに、最悪の生徒の反応としてはこうだ。「考えろって言うけど、先生はどう思ってんの? 先生の意見をまず言ってくれませんか」。結果として、生徒は答えを待つようになり、自分で考えることをやめる。学級の崩壊には拍車がかかり、学校は荒れ、評判が落ち、不良学校の烙印を押される。やがて校内を自転車で走り回り、先生は注意すると同時に殴られ、教師の勤続最長は1か月となる。毎日が教育実習。当然、街も荒れる。
一概には言えないが、問題児を消し去りたいと思っているのは、教師のほうであって、生徒ではない。というか、案外、問題児がいたほうが学校生活は面白かったりする。もちろん、いまだに放射能を出し続けている原発を問題児に喩えるならば、その問題児が20人くらい人を刺し殺していなければ、バランスが取れない。その意味では、とても不謹慎な話をしている。だが、少なくとも、「どうしようもない問題児」は、「どうしようもない」のだから、「どうしたらいいと思う?」と聞かれても、困るという問題があるだろう。しかも、その問題児は、実は学校の理事長の息子だったりするのだね。ちなみに、そういう寓意的な学園ドラマをやったら視聴率ははねあがると思う。たとえ前田敦子主演でも。
話を少しかえる。
放射能の問題に際しては、多くの人々が「にわか理系」になっている。彼らは被爆量と病因の因果関係やそのリスクについて得意顔で語る。そこで疑われていないのは「病気になったら大変だ」という考え方で、きっとそういう人は日頃から健康管理に余念がないのかもしれないと思う。そして慎重。少しでも被害の可能性があるなら、それを避けたほうがいいと思っている。そして、そのような被害を与えている主体(国家?)を批判すべきだと考えている。正論である。今回の一件は、明らかにチェルノブイリのときのように癌などの病気を増やすだろうし、やはりチェルノブイリのときのように、国家は賠償を最小限にしようとするだろう。しかし、それは政治家や評論家の目線であって、住民の目線ではない。
今日のトークで痛感したのは、まさにこの点。
福島の住民がいちばん恐れているのは、おそらく「自分の命が縮むこと」(だけ)ではない。これは唯一と言ってもよい喜ぶべきことだと思うが、そこまで個人主義的ではないのである。もっとも個人的なレベルでは、当然ながら「地縁・血縁が失われること」、もっとも集団的なレベルで言えば、「福島県の右側にぽっかりと穴があくこと」が、どうにかしたいことなのである。そうなれば必要なのは、10年、20年、あるいは50年後の生活プランをみんなで「描く」ことである。産業形態をひっくり返してしまうようなことも含めての街づくり。こうした提案の場をつくることが、ただひとつネオリベ的な統計学国家主義(『原発切抜帖』ではアメリカの原発政策における生政治的な側面が紹介されていた)と現地住民の生活をすり合わせる方法であるように思われたのである。

・8月12日。金曜日。7時台に叩き起こされる。午前中から飯坂で墓参り。地震の影響で3箇所のうちひとつの墓地が崩れ、いまにもそのうえの山肌までも崩れそうだということで、幸いお参りする墓地が減った。昼飯は「メヒコ」というシーフード・レストラン。午後は信夫山にて墓参り。夜は照井の餃子。ビール2杯ほど。3時間ほどしか寝ていなかったので、食後はもう眠りについていた。ような気がする。

・8月13日。土曜日。夕方から友人の家でパーティの準備。小学校1年1組からの悪友3人のうち、2人がこの秋に結婚式を挙げるというので、ちょっとしたお祝いである。4人で集まるのは5年くらい前の北海道旅行、3年くらい前の横浜旅行以来よね、と思っていたところ、自分以外の3人は全員が奥さんないしは彼氏を連れてきて、結局のところ独り身は自分だけという始末。ちなみに、Y彦の奥さんは、平野綾みたいなアイドル的要素の強い女性で、F原の奥さんは寺島しのぶみたいな芯の強そうな女性だった。二人とも、せめて3年間くらいは幸せな生活を送ってほしいと思う。12時すぎにタクシーに同乗して帰宅。