11月19・20・21日

・11月19日。金曜日である。明日〆切の原稿がまったく書けていない。まずい。夜は、マルターラーの「巨大なるブッフバッハ村」を観たが、いまひとつだった。期待も舞台装置も大きかっただけに、残念。終演後に知人に聞いたところ、ドリフみたいなものなので、もっと笑ってなんぼの劇ということだが、やはりいかりや不在では、最後の重要な詰めがうまくいかなかったのかもしれない(マルターラーは結局、来日しなかったとのことである)。今日は(あまりに空腹だったため)、初日乾杯というのに流れでいてしまったが、イカがタコではなく、イカスミが墨汁ではないように、演劇は社交はない(なぜならあの人たちはさっき見た芝居のことをすっかり忘れている)。ああいう人たちは、演劇の中身自体はどうでもいいのだな、おそらく。

☆記憶まで灰となりけり夕焚火

・11月20日。土曜。ここのところ悪い芝居ばかり見ているせいか、風邪をひいた。午前中は国立劇場に歌舞伎を観にいく予定だったが、断念。代わりに、池袋でドラカンという関西の劇団の「事件母」という芝居を観る。風邪気味でなくても、おそらく体調をえぐる芝居だったように思う。どうしてあんなに役者が「やる気がない」ように見えるのか? ぐったりしながら、午後からさる組織の会合に顔を出す。ひさしぶりにいろんな方にお会いできたのは、よかった。会合の後は、ほとんど全員で居酒屋に流れ、軽く飲む。まだ飲み足りないということで、Nさんとふたりで「コットンカフェ」に移動して、赤ワインをボトル1本いただく。「本当に呆れるような話」が次々と出る。「常識がない」のは一体どっちなのだろうか……

☆みなみなを渡りて渡る風邪たらん

・11月21日。日曜。しっかりと睡眠をとって、午後から大久保界隈にて人生2回目の句会に参加させていただく。とはいえ、本当にたいへんな1週間だったので、あまり句作に専心できなかったのだが、ベテランの方々に選をいただけるのは、このうえなく幸せなことである。7句中2句に主宰の「秀逸」をいただけたのも嬉しかったが、選んだ8句のうち2句が主宰の句、2句が主宰が特選として選んだ句だったことは、もっと嬉しかった。本当はみなさんと句会後にお茶にいきたかったが、夜は劇場に行かねばならず、駅前で別れることに。夕方から東京芸術劇場で「ところでアルトーさん」。よく言えば、三浦の関心を突き進めている、悪く言えば、別にアルトーじゃなくていいんじゃん、という話になるのだが、俳句で気分がよいので、あまり芝居のことは考えないようにして、8時頃に帰宅する。

☆しわぶきを扉開きてまたひとつ